2019年4月より「働き方」が変わります!B
〜労働者の健康管理の徹底と割増賃金率の引上げ〜

●2019年4月1日より施行

●概要
「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
現在、日本が直面している「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応する為には、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることがに必要となっています。
働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること目指すものです。

1.産業医・産業保健機能の強化 施行日:2019年4月1日
健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、産業医の活動環境が整備されます!
 産業医とは、労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導や助言を行う医師のことで、労働者が50人以上の事業場は産業医の選任が事業者の義務となっています。今回の改正で以下のT〜Uの内容が整備されます。
  1. 産業医の活動環境の整備
改正前
 労働者の健康を確保するために必要があると認める時は、事業者に対し、勧告することができる
改正後
 事業者から産業医への情報提供を充実・強化
※事業主は、長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならなくなりました

改正前
 事業者は、産業医から勧告を受けた場合、その勧告を尊重する義務がある
改正後
 産業医の活動と衛生委員会との関係を強化
※事業主は、産業医から受けた勧告の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなければならなくなり、衛生委員会での実効性のある健康確保対策の検討に役立てる

  1. 労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取扱ルールの推進
改正前
事業主は、労働者の健康相談等を継続的かつ計画的に行う必要がある(努力義務)
改正前
・産業医等による労働者の健康相談を強化
・事業者による労働者の健康情報の適正な取扱を推進
※事業主は、産業医等が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければならない
※事業主による労働者の健康情報の収集、保管、使用及び適正な管理について、指針を定め、労働者が安心して事業場における健康相談や健康診断を受けられるようにする


「産業医・産業保険機能の強化」の詳細はこちらから

2.労働時間の客観的な把握の義務化 施行日:2019年4月1日
労働時間の状況を客観的に把握することが、企業の義務に!
 今まで通達の対象外となっていた管理職や裁量労働制適用者も含め、すべての人の労働時間の状況を客観的に把握することが企業の義務になりました。
改正前
 割増賃金を適正に支払う為、労働時間を客観的に把握することを通達で規定
※裁量労働制適用者等は、この通達の対象外
改正後
 裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人が対象となるよう法律で義務づけ
○適用の対象となる範囲

 T.対象事業場
  • 労働基準法のうち労働時間に係る規定が適用されるすべての事業場
 U.対象労働者
  • 労働基準法第41条に定める者(管理監督者等)及びみなし労働時間制が適用される労働者*1を除くすべての労働者
*1みなし労働時間制が適用される労働者・・・@事業場外で労働をする者であり、労働時間の算定が困難な労働者、A専門業務型裁量労働制が適用される労働者、B企画業務型裁量労働制が適用される労働者のこと。
※労働時間の状況を客観的に把握することで、長時間働いた労働者に対する、医師による面接指導*2を確実に実施できます!

*2医師による面接指導・・・「労働安全衛生法」に基づいて、残業時間が一定時間を超えた労働者から申出があった場合、使用者は医師による面接指導を実施する義務があります。

「労働時間の適正な把握のためガイドライン」はこちらから
「労働時間の状況の把握」の詳細はこちらから


3.月60時間超の残業の割増賃金率の引上げ
 施行日:2023年4月1日(大企業は、2010年4月1日)

中小企業における、月60時間を超える残業を行う場合の割増賃金率が5割に引き上げられます!
 月60時間超の残業に対する割増賃金率の引上げは、大企業は既に施行(2010年4月)されており、中小企業は猶予措置により適用が見送られていました。しかし、今回の「働き方改革」で、この猶予措置が2023年4月1日を以て廃止され、大企業・中小企業どちらも、残業時間が月60時間を超えた場合、割増賃金率を50%以上にする必要があります。
改正前
月60時間超の残業割増賃金率

大企業:50%(2010年4月1日より)
中小企業:25%
改正後
月60時間超の残業割増賃金率
大企業・中小企業:50%
  1ヵ月の時間外労働
(1日8時間、週40時間を超える労働時間)
  1ヵ月の時間外労働
(1日8時間、週40時間を超える労働時間)
60時間以下 60時間超 60時間以下 60時間超
大企業 25% 50% 大企業 25% 50%
中小企業 25% 25% 中小企業 25% 50%

○中小企業の定義
業種 資本金の額または出資の総額 または 常時使用する労働者
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他(製造業、建設業、運輸業、その他) 3億円以下 300人以下