中小企業であっても議事録を必ず作成・保存しよう!

 平成26年12月にコーポレートガバナンスコード(企業統治指針)が発表され、大企業にはより透明・公正な経営が強く求められていますが、これは中小企業も同じです。株主総会や取締役会で議論し意思決定したことを記録した議事録を作成し保存することが重要になります。

コーポレートガバナンスコードとは?
公表された「コーポレートガバナンスコード原案」(金融庁・東京証券取引所)によると、「『コーポレートガバナンス』とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。本コード(原案)は、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる」としています。これの適用対象は上場会社とされていますが、情報開示による透明・公正な経営は中小企業でも求められます。

株主総会の議事録はなぜ必要なのか?

株主総会議事録や取締役会議事録の作成は法律で定められています。中小企業といえども必ず作成しなければいけません。

(1)税務調査等で証拠となりうる書類
 税務調査や万一裁判に訴えられたときなどにおいて、株主総会または取締役会が実際に開催され、審議して決議したかどうかが吟味されることがありますが、議事録は、その際の証拠となりうる重要な書類です。
 実際に税務調査の際に、役員報酬等の増額を決めた株主総会議事録等がなかったため、その損金算入が認められなかったケースもあります。
(2)多額の融資の際に議事録が必要
 法律では、多額の借入には取締役会の決議が必要と定められています。したがって、多額の融資を申し込む際、金融機関は必ず取締役会の承認を受けた議事録が作成されているかどうか確認します。取締役会議事録が作成されていないと、融資が受けられないこともあります。
(3)法律で作成・保存が義務
 会社法で、株主総会及び取締役会の議事録の作成と保存が義務づけられています。この議事録の作成において、記載等しなければならない事項が記載されていなかったり、作成した議事録が本店に10年間保管されていないと、取締役等は100万円以下の過料に処せられることがあります。
(4)登記の際には議事録の添付が必要
 株主総会で決議された事項には、商業登記が必要なものがあります。この登記をする際は、株主総会議事録を添付しなければなりません。

議事録に記載しなければならない事項

株主総会議事録や取締役会議事録に記載しなければならない主な事項は、以下のとおりです。これらは、単に記録するだけではなく、審議の実態を記載して作成する必要があります。

株主総会・取締役会議事録の記載事項
 ・開催日時と場所
 ・議事の経過の要領とその結果
 ・株主総会、取締役会で出た意見または発言の内容
 ・出席した取締役等の氏名
 ・議長の氏名
 ・議事録作成に携わった取締役の氏名   など

議事録の作成にあたっての注意点

議事録の作成に際しては、次の事項に注意する必要があります。

議事録作成上の注意点

1.議事録は企業自ら作成する
議事録の作成を会計事務所等に依頼することがあるようなのですが、会計事務所等は指導・助言はできても作成することはできません。
2.株主総会や取締役会は必ず適法に開催する
もし会議を開催していないのに議事録が作成されていると、議事録記載の決議自体が無効・不存在とみなされてしまいます。
3.議事録には会議の実態を記録する
・各議案について賛成したのは誰で、反対意見を述べて反対したのは誰かなども含めて会議の実態を記録しておきます。なお、議事録作成のため会議で記録したメモや録音データなどは必ず保存しておきます。
・非公開会社(すべての株式について譲渡制限規定を設けている会社)で取締役会を設置していない会社については、取締役(社長)が意思決定をしたときに、その内容を記録した内部資料を議事録代わりに作成しておきましょう。
4.株主総会議事録は総会後速やかに作成する
株主総会で決議された事項で登記が必要なものについては、2週間以内に登記しなければなりません。その際、議事録を添付することになるので、株主総会終了後、速やかに作成する必要があります。なお、役員が再任された場合も登記が必要です
5.議事録には出席取締役等に署名または記名押印をしてもらう
・株主総会議事録の場合
 法律では、議長や出席取締役・監査役の署名または記名押印は必要とされていませんが、内容等の確認のため署名または記名押印をしてもらいましょう。
・取締役会議事録の場合
 出席取締役及び監査役の署名または記名押印が必要です。
取締役等の任期を確認しましょう!
平成18年の新会社法施行によって、非上場の中小企業(株式譲渡制限会社)は、定款によって、取締役・監査役の任期を最大10年まで定めることができるようになりました。
平成28年で10年目に当たります。
取締役等の任期を延長している会社は、役員の任期を確認しましょう
本年の定時株主総会の終結で役員の任期が満了する場合には、定時株式総会での選任が必要になり、
議事録への記録、役員変更の登記を申請する必要がありますので注意してください。