●●● 役員給与の税務と注意点●●●

 従業員に支払う給与や賞与であれば、業績の善し悪しによって、支給額を増減させても全額を損金とすることができますが、オーナー企業である中小企業の役員給与の額を改定できるのは、基本的に年1回、事業年度開始から3ヶ月以内です

 <役員給与について>
1. 損金算入できる役員給与(定期同額給与)とは
 @支給時期が1か月以下の一定の期間ごとであること(実務上は月払いが一般的)
 Aその各支給時期における支給額が事業年度を通じて原則同額であること
  ※
損金算入とは?→税金を少なくする経費のこと

2.定時株主総会での役員給与の改定
通常改定で定期同額給与とみなされる要件は以下の通りになります。

@ 期首から原則3か月以内(3月決算法人なら6月末まで)に行う改定であること
A 事業年度内において、改定前の毎月の支給額が同額であること
B 事業年度内において、改定後の毎月の支給額が同額であること

事業年度の途中に増額・減額をすると、原則としてその一部が損金として認められません

3.業績悪化を理由に役員給与を減額する場合
やむを得ない事情により役員給与を減額せざるを得ない場合の例が以下の通りになります。

@ 財務諸表の数値が相当程度悪化した場合
A 倒産の危機に瀕している場合
B 経営悪化により、第三者である利害関係者(株主・債権者・取引先等)との関係上、
役員給与を減額しなければらならなくなった場合
※減額後も、全額損金として認められます


<家族役員・社員の給与の注意点>
 社長の家族や親族を役員や社員として給与を支給している場合、勤務実態と支給額が見合っているかどうかの注意が必要です。 この点は、近年
税務調査において厳しくチェックされています。

1. 勤務実態を明確にする
 例えば
  ・毎日出社していない
  ・短時間の勤務
  ・遠方に暮らしている
  ・学生である
  などの勤務実態に照らして、支給額が「不相当に高額である」とみなされると、
「不相当に高額」  な部分は損金として認められません。

  そのため、日頃から1ヶ月の勤務日数や1日の勤務時間、業務内容や取締役会への出席状況の記録などを残しておきます。
勤務実態の証明に役立つ主な書類等
【役員給与の場合】
   ・職務権限規程    ・取締役会議事録
   ・稟議書         ・勤務スケジュール表
   ・扶養控除等(異動)申告書 等
【従業員給与の場合】
   ・雇用契約書      ・出勤簿やタイムカード
   ・旅費交通費など経費の精算書
   ・扶養控除等(異動)申告書 等

2. 支給額を確定させる

 株主総会・取締役会で各人ごとの役員給与月額を決定した場合、
議事内容の議事録を作成します。
税務調査における確認事項となります。
支給額の決定・改定時の注意点
@ 支給額が、勤務実態と業務、会社収益、他の従業員給与や同業他社に照らして妥当であるかどうかを確認する。
A 支給額や支給方法を各人ごとに決める。
B 株主総会や取締役会の承認決議を得て、議事録を作成する。
C 事業年度の途中に恣意的な改定をしない。

<役員給与の決定にあたっての注意点>

 近年、法人税率の引き下げにより、社長の個人所得に対する所得税の方が高くなる例が増えています。役員給与の額を決める際には、以下の点に注意して決めましょう。

1. 税引後利益から試算する
 役員給与を決める際には、必ず税引後利益から試算します。仮に税引前利益で計算した場合、後々、法人税等の納付額によって、会社に残る金額が変わってきます。

 設備投資などで金融機関からの融資を検討している場合には、まず、必要な税引後利益を確保したうえで、役員給与の額を決めます

2. キャッシュ・フローに注意する
 役員給与を決める際には、キャッシュ・フローにも注意が必要です。損益計算書上の利益には、借入金の元本返済部分は含まれていないため、
借入返済の予定がある場合には、返済に必要なキャッシュを加味した利益予算を立てて、役員給与の額を検討します。

3. 法人税、所得税、社会保険料を考慮する
 役員給与の額が増えれば、会社も本人も社会保険料の負担が増えます。
 したがって、役員給与を決める際には
  ・会社が負担する法人税
  ・役員個人が負担する所得税
  ・双方が負担する社会保険料
  それぞれのバランスをみて決めるのが理想です。

4. 経営計画に基づいて決定する
 役員給与の額は、事業計画を元に、
利益に見合った妥当な額を決めましょう。
 例えば、前年並みの役員給与を確保しようと思えば、そのために必要な売上等の目標を決めて、それを達成しましょう。

取締役等の任期を確認しましょう!
 平成18年の新会社法施行によって、非上場の中小企業(株式譲渡制限会社)は、定款によって、取締役・監査役の任期を最大10年まで定めることができるようになりました。平成28年で10年目に当たります。
取締役等の任期を延長している会社は、役員の任期を確認しましょう